クリスマスに思う

 穏やかなクリスマスになりそうです。本年の10月に亡くなられた元国連高等弁務官の緒方貞子(おがたさだこ)さんが15年前の2004年日本YMCA同盟結成100周年において記念講演をされた記録冊子を手に入れました。
 この中で緒方氏は「人間の安全保障」についてご講演くださいました*1。東西冷戦の時代は東西の対立という重しの中で押さえつけられていた伝統的・民族的・社会的対立が東西冷戦が終結した中で一気に噴出したと述べます。これにより今まで「脅威」というものが外から襲ってきたものが一気に「内部」から噴出する。今まで仲良くしていたはずの隣人や他の民族や宗教の人々が互いに攻撃仕合いそして憎みあい分裂する時代がここから始まったというのです。
 シャーデンフロイデという言葉があります。他人を引きずり下ろしたときに生まれる快感のことです。この行動には脳内物質のオキシトシンが深い関わりを持っているのだそうです*2。オキシトシンは母と子など人同士の愛着形成にかかわるホルモンですが、最近の研究ではこれは愛情を増してゆくと同時に「妬み」という感情を強くしているということが解ってきました。つまりは深い愛情とともに裏返しの「妬み」が増長され他者の不幸を喜ぶ結果になるというのです。それに加え人間の防衛本能として、自分たちと違う人々を警戒し防衛のためにそれらを排除する感情が生まれると心理学者の中野伸子氏は述べます。ほとんどすべての人間は目立つ人間が失敗することを社会正義であると信じているといわれています。現代では自分とかかわりのないあったことのない人にもこれらの感情を持つようになってきています。テレビタレントのような元知事のH氏やライブドアの元CEOのH氏など、これらの方々の失敗行為やスキャンダルに怒りを感じ、社会的な攻撃をされることに快感を持ってしまうのです。
 緒方氏は「人間の安全保障を守る」とは人間の中枢にある自由を守り、人間自身に内在する強さと希望を実現させてゆくことである。つまり人間の持っている自由を一番に考え、その自由を実現させるための様々な希望を守ってゆくことであると述べます。
 現代の社会では人の持つ多様性を理解し許容しあい、他者の価値観や生き方を大切にしてゆかねばなりません。他民族や他宗教への許容という点は、長い間ほぼ同一の民族で暮らしてきてそうでないものを排除してきた島国に暮らす日本人の一番欠けているところかもしれません。クリスマスのこの時により一層多様性が認められ、互いに温かな社会を作ってゆく努力をすることが現代のクリスマスに果たされたことではないでしょうか。メリークリスマス。

滋賀YMAC総主事 久保田展史

*1「「平和への道」から人間の安全保障の視点から~YMCAスタディシリーズ⑲日本YMCA同盟発行
*2「シャーデンフロイデ」中野信子著 2018年幻冬舎新書

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です