セント・アンデレ・クロス(3)

「新しい生活様式は世界をよりよく変えるか」

 新型コロナウイルスにより「新しい生活様式」への変様が求められています。その中で企業によってはこれまでのように出社する必要がなく、在宅での仕事に切り替え、大規模なオフィスをたたむところも出てきました。Zoomなどを使ったミーティング方法が広く使われるようになり、「会議が遠方でも参加できるようになった」「気軽に顔が見られるようになった」という良い評価もあります。このことが果たして良い方向ばかりにいくのでしょうか。Zoomなどのミーティングでは今までの出席会議と違い、発言をしなくても目立ちません。ここで多くの司会者は「皆の反応が得られずに進行に苦慮する」と言います。参加者は「一歩引いた感じで参加できるので発言しなくても済む」と言います。

 大学は対面授業を始めましたが、まだまだWeb上の授業も多いようです。このような状況で伸び伸びできる若者もいれば、内側へと引きこもってしまう人達もいます。ある大学の1年生で退学や休学を考えている学生が10%を超えて学校側が慌てているという報道もありました。

 Web頼りの様式もこれらのシステムがダウンする環境になったら、日本の経済はどうなるのでしょう。マスクに隠れた正面の画像だけで人と応対する経験の積み重ねで、若者は自分の夢を開いてゆく力を育てられるのでしょうか。昔より、人は人から影響を受けて育つと言います。先輩にあこがれて発奮する。同期の仲間と支えあい励ましあいながら危機を乗り越える。そもそも同期の仲間すら感じないという今年の状況はWebで補えるとは思えません。家族の在り方も変わってきました。これらのことが社会問題として現われるのにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、心に問題を抱えてしまった人達の姿が見えにくくなることは確かです。手をこまねいてはいられないと感じています。

文/滋賀YMCA総主事 久保田展史(滋賀YMCA News Xmas/No.84 2020)

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